図説:東北の稲作と冷害

湛水された水田土壌の特徴と窒素の動き


湛水された土壌は水稲の生育のためにさまざまな有利な側面をもつ。ここでは、そのポイントを窒素の動きを例にして概説する。

湛水された水田土壌の特徴と窒素の動き

湛水は稲の生長と栄養の供給に独特の環境を作り出す。その代表的な特徴は次の通りである。
    1) 湛水下の稲の根は酸素の欠乏とその後の還元状態にさらされる。
    2) 酸素が欠乏すると、土壌中の二酸化炭素や有機酸の量が急速に増える。また、酸素のない状態で活動する微生物によってメタンなどが生成される。
    3) 湛水土壌では稲が利用できる窒素の主な形態はアンモニアである。
    4) 湛水土壌ではリン酸が利用できやすくなる。
    5) リン、カリウム、鉄、マンガン、ケイ素の土壌溶液中の濃度は土壌を湛水にすることによって上昇する。2価鉄イオン濃度の上昇はしばしば稲に鉄障害をもたらす。
ここでは、稲の生育に最も重要な窒素が湛水土壌中で、どのような変化によって利用されたり、利用されなかったりするのか。その機構を下図に示す。
湛水土壌中の窒素
水を張った水田は、水の層と作土の層からなる。作土層はごく表層(2cm前後)の酸化層とその下の還元層に分かれる。土壌中で起こる窒素化合物の変化は、無機態窒素と有機態窒素の双方向のさまざまな反応が絶えず並行して起こっている。
還元層では、有機物に含まれる有機態窒素が微生物の働きによって無機化されてアンモニアになる。この過程はアンモニア化成作用といわれる。このアンモニアは還元層では酸化されないで、安定的に保持される。これが稲の根に吸収・利用される。反対に、アンモニアが微生物の働きによって有機態窒素に変わることを有機化作用という。
このようにして作られたアンモニアや肥料として土壌中に施されたアンモニアは、酸化層では微生物(硝化菌)の作用で硝酸に変わる。この過程は硝化作用といわれる。生成された硝酸は還元層に移行し、そこで微生物(脱窒菌)により窒素ガスとなり、水田から大気中に逃げる。この過程は脱窒作用といわれる。
このように、土壌中の窒素は微生物の働きによってさまざまな変化を受ける。稲に吸収・利用されるアンモニアは還元層で安定的に保持される。これら無機態窒素は土壌中の全窒素量のわずか1%内外で、その他は有機態窒素である。水稲の生育期間中に有機態窒素は微生物によって徐々にアンモニアに変えられ水稲に利用される。この窒素がいわゆる地力窒素である。年間に供給される地力窒素は土壌中の全窒素の1〜5%であり、水田の生産力に重要である。

参考資料:
 甲斐秀昭(1978) 水田土壌中における窒素の形態変化と有効化。川口桂三郎編「水田土壌学」講談社。

参照図説:
 活着期から分げつ期の水管理のポイント

質 問湛水土壌中のリン酸はどのようにして有効化されるか?

 
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