図説:東北の稲作と冷害

エルニーニョ現象と冷害


エルニーニョ現象と冷害との関係は、冷夏という現象を通して深く結びついているようにみられる。したがって、早期警戒の監視活動においては、エルニーニョ現象の発生を注視する必要がある。

 エルニーニョ現象が気象学的に注目されるようになったのは、1972〜73年の発生からといわれる。これを契機に、米国を中心に科学的な研究が始まった。わが国における研究の始まりは1982〜83年の発生まで待たなければならなかった。エルニーニョ現象とは、気象庁の定義では、東部から中部太平洋赤道域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度の海域:エルニーニョ監視海域と呼称)の月平均海面水温が平年からの偏差(平年値は1961〜90年の30年間の平均値)の5か月移動平均値が6か月以上続けて0.5℃以上高くなった場合を、"エルニーニョ現象"という。同様のみかたで、反対に0.5℃以上低くなった場合は、"ラニーニャ現象"と呼ばれる。
海面水温平年偏差推定画像
 具体的なイメージを得るために、米国海洋大気庁のエルニーニョホームページ(http://www.elnino.noaa.gov/)にある全球の海面水温平年偏差推定画像(上の図)を参考にする。2001年3月31日のものは、エルニーニョ監視海域(おおまかに長方形で囲っている範囲)は正偏差になり、今後エルニーニョ現象につながるかどうか、注目された時である。2001年5月28日ものは、その後監視海域の海面水温が平年より低くなり始めた時である。
 次に、エルニーニョ現象と日本の天候との関係を、気象庁が1994年に発行した『近年における世界の異常気象と気候変動−その実態と見通し−(V)』でみると、次のような特徴が統計的に摘出される。
  1. 梅雨期:エルニーニョ現象が発生している年は、梅雨明けが平年並みまたは遅れる。
  2. 夏の天候:エルニーニョ現象が発生している年は、6月〜8月の平均気温が平年並みまたは低くなる。
  3. 台風:エルニーニョ現象が発生している年は、その前年や翌年に比べ、発生数が少なくなる傾向がみられる。
  4. 冬の天候:エルニーニョ現象が発生している年は、12月〜2月の平均気温が平年並みまたは高くなる。
 さて、エルニーニョ現象と東北の水稲冷害との関係を、過去にさかのぼってみる。次の表は、佐伯理郎(2001)「エルニーニョ現象に学ぶ」にあるエルニーニョ・ラニーニャ現象発生期間を基に、冷害年次を加えて作成したものである。
エルニーニョ現象発生期間と北日本冷害年次との関係
 エルニーニョ現象は、1949年以降13回周期的に発生している。そのうち、エルニーニョ現象と水稲の冷害が同時に起こったのは8回、局所的なものを加えると9回となる。また、エルニーニョ現象が発生しているときに、冷害とならなかった年もある。もう一つの注目すべきは、背景を黄色でした発生年次である。すなわち、稲作が始まる春にエルニーニョ現象が発生し始めたことを示すもので、過去5回事例がある。
 このように、エルニーニョ現象と冷害との関係は、冷夏という現象を通して深く結びついているようにみられる。したがって、冷害の早期警戒監視においては、エルニーニョ現象の発生を注視する必要があろう。

 
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