図説:東北の稲作と冷害

前歴深水管理の効果


幼穂形成期から減数分裂期直前までの前歴期間は冷害を回避するための対応技術を実行する重要な時期である。この期間の深水管理の意義を概説する。

前歴深水管理の効果

前歴深水は危険期の深水管理と組み合わせると冷害回避効果が著しく高まることが知られている。
前歴期間とは、幼穂が形成され始めてから危険期である減数分裂期直前までの期間をいう。前歴深水管理は、幼穂形成期頃から長期にわたり低温が予想される場合に、前歴期間水深を10cm程度に保持し、水温をできるだけ高く維持することを目的とする。
この技術を提唱したのは当時の北海道農業試験場の佐竹徹夫氏らであり、彼らの実験結果を参考に前歴期間の水温を高く維持すると、障害不稔の発生がどの程度防げるかをみてみる。

まず、前歴期間の水温の効果を知るために、耐冷性の異なる「はやゆき」と「農林20号」を使って、水深10cm、水温を18度〜30度の範囲で変化させ、その後の危険期に12度3日間の冷気温にさらせて稔実程度(稔実歩合とは異なり、統計処理した指標)を調査した結果を下図に模式的に示す。
前歴水温
水温が18度〜25度の範囲では、稔実程度はほぼ直線的に良好になる。また水温が25度を超えると、水温の効果がほとんどみられなくなる。耐冷性の強い「はやゆき」は、耐冷性の弱い「農林20号」に比べてどの水温でも稔実は良好である。
このように、前歴期間に水深を10cmで、水温25度程度まで高くすればするほど、危険期の低温障害を著しく軽減できることが分かる。

次に、前歴期間の水深がなぜ10cm程度必要であるのかをみてみる。
前歴期間の水深を1,5,10,15cmとして水温25度、気温20度で処理し、その後の危険期に12度3日間の冷気温にさらし、稔実程度を調べた結果を下図に模式的に示す。無処理区は水温25度、気温昼間24度・夜間19度である。品種は「はやゆき」。
前歴水深
冷気温処理区における水深と稔実程度の関係をみると、水深が10cm以下になると稔実程度が急激に悪くなり、逆にそれ以上では稔実程度にほとんど差がみられない。また水深が10cm以下になるにつれて、無処理区と冷気温処理区の稔実程度の差が徐々に拡大する。
このようなことから、前歴深水の水深は10cm程度必要であることが分かる。
以上の結果は人工気象室でポット栽培した稲で得られたものであるが、その後の圃場試験でこの効果は確認され、冷害回避の応急技術として奨励されている。

参考資料:
 佐竹徹夫ら(1988) 「新水管理法による冷害防止」日本作物学会紀事 57(1):234-241.

参照図説:

質 問:前歴深水と危険期深水の冷害回避効果はどの程度あるのですか?

 
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