図説:東北の稲作と冷害

幼穂分化から出穂までの水管理のポイント


この時期の水管理は気象条件で対応が異なることを、低温障害の発生との関係で概説する。

幼穂分化から出穂までの水管理のポイント

幼穂が形成される期間の水管理のポイントは気象条件によって対応が次のように異なる。
○ 平年的な気象条件下では、浅水や間断灌漑で土壌窒素の発現を促し、根の活性を高く維持することが大切となる。
○ 低温が長期に続くと予想される場合には、前歴深水と危険期深水管理を組み合わせて、1穂籾数の減少や障害不稔の発生を予防することが重要である。

深水管理の意義を説明する前に、この期間に低温条件にさらされると幼穂の形成にどのような悪影響を及ぼすのか。かなり古い文献ではあるが、先駆的研究の1つを下図に紹介する。品種は陸羽132号。生育時期別に10日間、水温15度の水槽に水深6cmで処理して、1穂籾数と不稔歩合を調査し、これらに大きく影響する生育時期を特定したものである。
生育時期別冷水温処理が1穂籾数と不稔歩合に及ぼす影響
1穂籾数(穎花数)が減少するのは次の2時期である。
1つは出穂前30日前後であり、幼穂の原基ができてから1次、2次枝梗、穎花が分化する幼穂の形成初期に相当する。養分吸収や光合成作用が低下して、枝梗形成が阻害され穎花数が少なくなることが最大の原因である。
2つは出穂前11日頃の減数分裂期前後であり、穂が急伸長すると同時に穎花も急成長する時期である。養分吸収や光合成作用が低下して、生長中の穎花の一部が退化することが最大の原因である。

次に不稔の発生は出穂前24日頃(幼穂形成期)から急増し、出穂前11日頃の減数分裂期前後に最高に達し、その後は減少する。
この実験では水深が6cmであったため、幼穂は減数分裂期に水面上に位置していたが、最近の深水(水深20cm)低水温や低気温処理による実験結果とほぼ同様な現象が認められている。筆者はこの原因について次のように考察している。
「低温による根の吸収作用の減退と、冷水の吸収ならびに冷水槽の微気象に起因する植物自体の低温のため光合成作用の低下に伴う栄養障害による“間接的作用”と考えられる。」
その後の研究から、減数分裂期の低気温や低水温は、直接的あるいは間接的作用は別にして、花粉の形成を著しく阻害し、不稔が多発することが分かっている。
このように、幼穂が形成され始めて出穂するまでの間に低温に遭遇すると、収量は1穂籾数の減少や不稔の発生を通して大きく影響される。

参考資料:
 木戸三夫(1941) 「水稲の発育並びに節間伸長と冷水掛け流しによる稔実障害及び出穂遅延」農業及び園芸 16巻 9号。1463-1466. 1605-1608。

参照図説:

質 問:どの程度の低温で障害が現れるのですか?

 
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