図説:東北の稲作と冷害

低温に弱い稲の生育ステージ


幼穂が形成され始めてから出穂・開花するまでの期間は、低温による障害を最も受けやすい時期である。この期間の内、幼穂形成期、減数分裂期と出穂・開花期の3時期が低温に敏感である。各時期の障害発生の出方と限界温度を概説する。

低温に弱い稲の生育ステージ

稲にとって低温に弱い時期は3つある。幼穂形成期、減数分裂期と出穂・開花期である。
この3時期のうち、最も弱いのは減数分裂期である。この時期は出穂前14〜7日頃に相当し、穂ばらみ期とも呼ばれる。減数分裂期の限界温度は一般的には次の通りである。
一つの実験結果を下図に模式的に示す。これは12度の低温で処理日数を変えて、出穂前30日頃から出穂期まで時期をずらせて処理し、出穂前日数と稔実歩合の関係をみたものである。
Hayase et al.(1969)
6日間処理でみられるように、減数分裂期に相当する出穂前11日頃を中心に稔実歩合の低下が顕著である。また、幼穂形成期に相当する出穂前24日頃にも稔実歩合の低下がみられる。
4日間処理では50%以上の不稔が生じ、2日間処理では不稔はほとんど発生しない。
この不稔の発生は、小胞子の発育異常によって正常な花粉が形成されないことによる。

減数分裂期の次に低温に弱い時期は出穂・開花期である。
開花・受精には最高気温25度、最低気温15度、平均気温20度以上が必要とされる。最高気温25度−最低気温15度は実用的開花限界温度といわれる(田中 1962)。また、受精の限界気温は16度ともいわれる。
開花期に低温に遭遇すると、花粉の発芽能力が失われて不稔が発生する。

出穂・開花期の次に低温に弱い時期は幼穂形成期で、出穂前24日、幼穂長2mmの頃である。
下図は水温12.9度で生育時期をずらせて10日間処理したときの不稔歩合と奇形穎花割合を出穂前日数で模式的に示したものである。
田中(1962)
奇形穎花割合に示されるように、幼穂形成期前後の低温によって奇形穎花が多発することが分かる。奇形穎花は正常な籾にはならない。
このように、稲にとっては上の3時期に低温に遭遇すると、各時期で障害の発生機構は異なるが、不稔が多発し冷害を引き起こす。幼穂形成期と減数分裂期の低温は深水管理によって水温を高く維持して、不稔発生をある程度防ぐことができるが、開花期の低温については今のところ防ぐ技術を持っていない。
これらの冷害危険期は、東北地域では7月中旬から8月中旬までの1か月間にある。


参考資料:
 西山岩男(1985) 「イネの冷害生理学」北海道大学図書刊行会。

参照図説:

質 問:深水管理で冷温障害をどの程度防ぐことができるのですか?

 
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