図説:東北の稲作と冷害

いもち病の主因と誘因


いもち病は、稲の病気では最も被害が甚大なため昔から恐れられてきた。長年にわたる研究の成果から防除技術は進み、被害は昔に比べれば軽減されつつある。しかし、冷害年や長雨の年には多発することが多く、完全に防除できる段階には達していない。

いもち病の主因と誘因

 わが国における水稲の単収は明治以来倍増しているが、単収の年次変動はかなり大きい。年次変動の最大の原因は異常気象であるが、異常気象に伴う病害虫の発生が被害を一層増幅している。なかでも冷害、長雨に伴ういもち病の被害が最たるものである。
 東北全体におけるいもち病の被害面積と被害量を下図に示す。
東北全体でのいもち
 この図からも、冷害年に多発することが多いこと、また冷害年以外でも多発することがあることが分かる。平成10年度の作付け面積は約46万ヘクタール、収穫量は2,415千トンであった。この数値から大まかな被害の状況を推察していただきたい。いもち病がいかにこわい病気であり、未だ完全に予防できていないものであることが分かる。各県別のものは、次のリンクで参照下さい(青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県)。いもち病の被害の出方は県によってそれぞれ特徴があるのが分かる。
 わが国において、いもち病が菌類による病気であることを最初に指摘したのは白井(1896年)である。いもち病の主因と誘因は下図のようにまとめられる。
いもち病の主因と誘因
 主因はいもち病菌である。第一次伝染源は保菌種籾、被害わら、被害もみ殻などである。  罹病苗を移植すれば本田で発病する。また感染あるいは保菌苗を植えると、これが本田の第一次伝染源となる。特に補植用苗や畦畔に放置された残り苗が本田の主要な第一次伝染源になることが多い。本田畦畔に放置あるいは堆積された被害わら上では、春になって気温が上がり、降雨にあうと分生子が形成され、これが飛散し第一次伝染源となる。
 第二次伝染源は、罹病苗や保菌苗の持ち込みと、被害わらや早期に発病した水田、あるいは稲以外の罹病植物などからの分生子の飛来によるものである。罹病苗や保菌苗を持ち込んだ場合、それを中心にその周辺の株に次々と伝播し、「発病中心株」で症状が激しく、遠ざかるにつれて症状が少なくなる、いわゆる「坪状発生」である。
 これとは別に、常発地帯では全域にわたって、また、同一水田内では一様に発病株が分布するような現象がしばしば見られる。このような発生様相を小林(1984)は「全般発生」と呼んでいる。これが起こるには、伝搬・感染に好適な気象条件と、稲体の葉面積がある程度以上であることが必要とされる。
 上のようないもち病の発生を助長する誘因としては、大きく気象条件と稲体の条件とに分けられる。
 いもち病は空気伝染性の病害であるため、気象条件と密接な関係がある。気温は降雨とともにいもち病の発生を支配する最も大きい要因である。分生子の発芽、侵入、葉の組織内での蔓延に好適な温度はおおまかに20〜25度といわれる。また日照不足の後多照になると、稲の抵抗力が低下し、病勢が急速に進展する。いもち病菌の発芽、侵入には水滴が不可欠である。したがって、降雨はいもち病の発生を助長する最も主要な要因である。また強風などで葉の表面が傷つくと、菌の侵入が容易になるともいわれている。
 稲体の条件としては、稲体の窒素濃度が高いと発病しやすい。窒素肥料の多用により抵抗力が低下し、過繁茂が株内湿度を高め、分生子形成、発芽、感染を助長するためである。他には異常還元に伴う根腐れ、マグネシウム欠乏などが助長するともいわれている。
 このように、いもち病の発生は、伝染源の有無、気象条件、稲の体質、予防防除剤の施用の有無などが総合的に関係して引き起こされるのである。

<参考資料>
大畑貫一(1989)。稲の病害−診断・生態・防除−。全国農村教育協会。

 
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